mBotは電子工作に使ってこそ味が出る

 STEAM教育向けのプログラマブルロボットとして、今や定番となったMakeblockのmBot
 一般的には、車型の基本組み立てモデで、LED制御ブザーを使ったメロディDCモーターを制御しての前後左右走行超音波センサーを使っての障害物回避ライントレースセンサーを使っての黒線走行を、ビジュアルプログラミングソフトウェア「mBlock」でプログラミングをしていくという使い方がされています。

 プログラミング教育用として確固たる地位を築きつつあるmBotですが、それだけでは、本来持つポテンシャルは十分に生かされていません。
 mBotの心臓部であるmCoreは、様々なセンサーを制御できる強力なCPUを搭載しており、様々な電子モジュールを使った電子工作やものづくり学習用のツールとしても非常に有効です。

 一方で、電子工作やものノづくりに活用しようとする場合、ほとんど日本語の情報が無く、Makeblock社の重い英語サイトなどを見て自分でかなり苦労して調べながら進める必要があり、なかなかそこまで手を出せず、ラインフォロワーセンサーと超音波センサーで十分に楽しんだ後は、mBotをお蔵入りさせてきた日本のユーザーも多いんじゃないかと思います。

 ちなみに、このサイトは、そういったユーザーにも、更に活用方法があるんだという事を紹介しようというのがきっかけで始めました。

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 さて、そんな方々にとって、mBotを電子工作やものづくりに生かすためのノウハウが詰まった一冊が、Makerムーブメントの中心的な存在である、オライリー・ジャパンから、7月26日に出版されました。
 
 
mBotでものづくりをはじめよう」 
発行:オライリー・ジャパン
著者:Rick Schertle、Andrew Carle   
翻訳:倉本大資、若林健一
 
目次:
1章:mBotを教室へ
2章:mBotのソフトウェアとセンサー
3章:かわいい生き物を作ろう
4章:センサーで身の回りを調べよう
5章:いろいろなロボットを作ろう
6章:大きなものと小さなものを作ろう
 
過去5年間で、子供たちに優しいプログラミングとロボット工学ツールが爆発的に増えました。何重ものキットやボードを使った結果、私たちはmBotに深い感銘を受けました。(中略)mBotを使えば、初心者でも基本の車型mBotから触り始めることができ、インスピレーションが生まれたときにはより高度な機能を使ったり、新しい部品を加えてカスタマイズができます。まったくの初心者から経験豊富なMakerまでが快適にものづくりできるようにするmBotの柔軟性は、教室やコミュニティグループにとってとても重要です。

「はじめに」より
 
 300ページ以上あるボリュームたっぷりの内容で、mBotを走らせずに取り組むプロジェクトの紹介、レゴブロックを組み合わせたプロジェクトも豊富です。

 mBotユーザーにとっては、その魅力を再発見させてくれ、これからmBotに取り組もうとされる方、特に教育現場に身を置かれている先生・講師・メンターにとっては、STEAM講座・ものづくり・プログラミング講座のカリキュラムの指針にも使える非常に有効な一冊になります。

 ちなみに、子どもが読むというよりは、子どもに教えようとしたり、子どもと楽しもうとしたり、あるいは、自身の趣味として楽しもうとする、大人向けの体裁・文体になっています。

 
こちらのページでは、この本の魅力をご紹介していきたいと思います。
 

はじめてmBotを触る人向けの1章と2章

 1章は、mBotの組み立て手順・mCoreの説明のほかに、LEGOパーツを使った部品の保管方法などが掲載されています。何というか、教室での活用経験を生かしたノウハウがぎっしり詰まっていて、その保管方法の準備だけでもSTEAM学習になりそうな勢いです(笑)

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出典:「mBotでものづくりをはじめよう」オライリー・ジャパン

 1章のクライマックスは、デフォルトでインストールされているプログラム(ライントレース走行・障害物回避走行・赤外線リモコン操作)を活用し、教室の子供たちに、すぐにロボットを使った探求学習をするプロジェクトの例が掲載されている点ですね。1章見ただけで、すぐにワークショップのインスピレーションが湧いてきます。

 2章は、主にmBotをプログラミングするソフトウェアについて、アプリ版の活用方法とPC版mBlock5について、及びPCとmBotの接続方法、及び、各種センサー(拡張モジュールについても掲載)を使ったレシピ例とサンプルプログラムなどが言及されています。

 PC-mBot接続方法についてや、各サンプルプログラムが、最新のmBlockバージョン(2019年7月26日時点で最新のmBlock5_v5.1)に対応して掲載されている部分は、特筆すべき点です。
 なぜかっていうと、mBlock5_v5.1は「2019年7月1日」にメジャーアップデート公開されたもので、しばらくは、このバージョンを元にした情報で問題ないからです。
 今後、しばらくは、こちらの本のソフトウェアの情報が古いという事にはならないはずです。

 ちなみに、個人的意見でいえば、仮に今後ソフトウェアバージョンが更新されたとしても、本の内容自体(教室での活用例・各プロジェクトなど)は、mBotを使う限り古くはならないものだと思います。

mCoreとセンサーを使ったDIY的プロジェクト掲載の3章・4章

 3章は、mBotの車輪を取り外して、制御ボードmCoreを活用しつつ、段ボールなどで追加パーツを作っていくDIY的プロジェクトの事例がかなり詳しく掲載されています。この本の中核的な内容と呼べる、この3章だけでも、数種類のワークショップに展開できますね。

 4章は、センサーを使って身の回りの状況を調べたり、ドアモニターのプロジェクトの事例などが掲載されています。最新のmBlock5の機能であるセンサーデータチャート作成機能の使い方までで言及されていて、ここまでくると、中学生、高校生、大人でも十分おなか一杯になる本格的な内容です(笑)。

mBotをカスタマイズしてゲームチャレンジまで行うクライマックスの5章

 5章は、mBotに車輪を付け、Makeblock社製の機構部品や、身の回りのもの(洗濯ばさみなど)、3Dプリンタで作ったロボットアーム機構部品(部品図面データは、本に掲載のURLからDL可能)など使って、mBotをカスタマイズし、それを利用したゲームアイデアなどが掲載されています。

 特に秀逸なのは、サーボモーター活用もできる「カタパルトボールランチャー」プロジェクトですね。これやると、mBotの上位機種であるUltimate2.0が不要になる勢いです(笑)

mBotのキットの機能をはるかに超える拡張プロジェクト紹介の6章

 6章のプロジェクトはやばいです。LEGOを使った小さなおもちゃの家の防災システムプロジェクトから、最終的には炎センサーを使って実際の火を検知して水をかけるプロジェクトの紹介です。あえて、ここでは言及しません。是非お手に取って、見て頂けたらと思います(笑)。

オライリー・ジャパン「mBotでものづくりをはじめよう」に向いている人

 さて、ご紹介してきた「mBotでものづくりを始めよう」ですが、既存のmBotユーザーには100%お薦めの内容となっています。
 
 掲載されているプロジェクトのサンプルプログラムはそこまで複雑なものではなく、どちらかというと、そのプログラムを作成するまでのハードウェアの準備の過程や、電子工作、身の回りのものを使った「mBot工作」のインスピレーションを刺激する内容が豊富に掲載されています。
 
 もし、mBotのライントレースとか超音波センサーとか、もう飽きちゃったから、そろそろメルカリに出品しようかなと思われている貴方!、今やメルカリでも、mBotはそんなに高値で売れないので、手放すのはやめましょう。それよりも、こちらの書籍を利用して、再度mBotの味を噛みしめる事をお勧めします。

 最後に、この本に向いていない人にも触れた方が良いので。
もし、ビジュアルプログラミングを一度も経験したことが無く、まずは、プログラミングを楽しみたいという方は、この本ではなく、まずは、こちらのサイトに豊富に掲載されているmBotプログラミングの例を見て大体のビジュアルプログラミングの感触を掴んでいただくことをお勧めします。そのあと、こちらの本を手に取ることが、より味わい深い体験が出来るポイントかと思います。

mBotとオライリージャパンの書籍の画像